キャリアオイルはベースオイルとも呼ばれる植物油のことです。アロマにおいてはトリートメントの精油を希釈するための基材になるものですが、これも精油と同じようにさまざまな種類があります。ここではキャリアオイルの種類と、そのキャリアオイルに含まれる成分について解説していきたいと思います。
精油を運ぶ役目を持っているオイル
アロマでいうキャリアオイルとは、精油を希釈することによりトリートメントをスムーズに行うための基材のことを指します。トリートメントによって皮脂腺から分泌された皮脂と汗腺から分泌された汗が混ざり合うことで角質層を保護する皮脂膜を形成する働きがあります。 この結果、肌を保護して乾燥から守ってくれるのです。
また、キャリアオイルは植物から抽出される油脂です。不揮発性でありながら精油とは異なった化学成分で構成されているため異なる性質を持っていますが、精油とは同じ油脂類であるため簡単に混ざり合います。
脂肪酸とは
『油』は石油系を原料として合成、精製された鉱物油と植物から抽出している植物油が存在します。これらはどちらともグリセロールという分子と脂肪酸が結合した構造をしており、総称して『脂肪酸』と呼ばれているものです。このグリセロールと結合する脂肪酸の種類や含有率は植物油によって異なり、その脂肪酸の構成に違いがあることで性質や栄養に違いがあります。
そして、アロマではキャリアオイルとして植物油を使用しますが、日常生活(特に食事)においても油を摂取します。実はこの植物油も『飽和脂肪酸』と『不飽和脂肪酸』に分類されます。次の項目ではこの2種類を詳しく紹介していきます。ここを知識を深めておくことでキャリアオイルが理解しやすくなることはもちろんのこと、日常で摂取する油を賢く摂取することができますよ。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は牛や豚などの動物性油脂に多く含まれていて、融点(溶ける温度)が高く、常温では固形の形をしています。人間が身体を維持するために必要なエネルギー源となりますが、生活習慣病などの原因にもなるため注意が必要です。
飽和脂肪酸の種類
主な脂肪酸 | 主なオイル |
ラウリン酸 | ココナッツ |
ミリスチン酸 | ココナッツ、バター |
パルミチン酸 | 牛や豚の油 |
ステアリン酸 | 牛や豚の油、シアバター |
アロマの視点から見る飽和脂肪酸
分子である炭素間に二重結合を持たない脂肪酸のことで、主に肌の保護機能の維持に適しています。常温で固体のものが多いことや酸化しにくいことなど、安定性があることがメリットとして挙げられます。
不飽和脂肪酸
一方、不飽和脂肪酸には植物油や魚油に多く含まれています。融点は低く、常温では液体です。身体内では物質代謝されてストレスを和らげたり、アレルギーを抑えたり、性ホルモンを分泌したりと有用な物質へと形を変える重要なものです。不飽和脂肪酸は2重結合をして形を変えていくのですが、2重結合がひとつの場合は1価不飽和脂肪酸、2つの場合は2価不飽和脂肪酸、3つの場合は3価不飽和脂肪酸と名称が変化していきます。また、1価不飽和脂肪酸は別名『オメガ9脂肪酸』とも呼ばれ、身体にとって重要なこの脂肪酸は肌に馴染みやすく、肌の水分補給やしなやかさ、弾力性をサポートしてくれます。他にも、人間にとって不可欠な脂肪酸である2価と3価の不飽和脂肪酸は多価不飽和脂肪酸と呼ばれ、大きく分けてオメガ3、オメガ6脂肪酸を含んでいます。
では、もっと詳しく見ていきましょう。
1価不飽和脂肪酸は『オレイン酸』と『パルミトレイン酸』に分類出来ます。このオレイン酸には血中の悪玉コレステロールを減らす働きがあります。また、多価不飽和脂肪酸の『リノール酸』や『α-リノレン酸』は身体内ではほとんど作ることが出来ない、または作られたとしてもとても少ない脂肪酸に分けることが出来ます。これらは食品から摂取した方が望ましい脂肪酸を『必須脂肪酸』といいます。
不飽和脂肪酸の種類と特徴
オレイン酸(1価不飽和脂肪酸)
オレイン酸は肌の皮脂成分に含まれている成分。肌への親和性が高く肌の表面に深く浸透し馴染みも良いため、肌の弾力性、しなやかさ、潤いを与えます。
また肌トラブルを和らげて落ち着かせることでも知られています。
オメガ9が豊富なキャリアオイルには、アボカド、スイートアーモンド、オリーブがあります。
パルミトレイン酸
酸化しにくい特徴を持っており、人間の皮膚にも20%ほど含まれている。マカダミアナッツ・ヘーゼルナッツなど
リノール酸(2価不飽和脂肪酸)
オメガ6脂肪酸でもあるリノール酸は主に肌のバリア機能の維持に優れています。月見草、ひまわり、グレープシードなどはリノール酸を豊富に含んでおり、軽い質感で肌への親和性が高く浸透性が高いのが特徴です。
α-リノレン酸(3価不飽和脂肪酸)
オメガ3脂肪酸でもあるα-リノレン酸は、強力な鎮静性と抗炎症特性を持ち、肌トラブルや肌の赤みを和らげることで知られています。エゴマやローズヒップ、亜麻仁などのオイルに含まれています。
γ-リノレン酸(3価不飽和脂肪酸)
オメガ6脂肪酸でもあるγ-リノレン酸は肌の炎症を和らげて落ち着かせる働きがあるといわれています。肌のバリア機能と水分を維持することで角質層を保護する皮脂膜の形成を促します。
ボリジや月見草などのオイルによく含まれています。酸化しやすいので注意が必要。
含まれる脂肪酸組成に応じて質感と有効性が異うため、一般的には多価不飽和脂肪酸が多く含まれるほど浸透性が高くなります。また、オメガ3と6のバランスが取れた脂肪酸を持つものはケアに向いているオイルです。乾燥した肌に水分を与えて調子を整えるため敏感肌にも適しています。他にも、オイルに含まれる一価不飽和脂肪酸が多いほど肌を柔らかくし不安定な肌のバランスを整えてくれるはずです。
キャリアオイルの種類
たくさんのキャリアオイルが存在するのですが、ここでは単体で使用できるキャリオイルを紹介していきます。
・スイートアーモンドオイル
適度な粘度で柔らかい質感のため、全身のマッサージで使用されます。
アーモンドの香りがするもののほぼ無臭で、色は淡い黄色です。
・ホホバオイル
粘度が低く軽い質感のため、広範囲のボディマッサージで使用されます。
ホホバオイルの香りは無臭で、安定性が高いことが特徴です。
・グレープシードオイル
粘度が低くさらさらとした質感のため、主にフェイシャルマッサージで使用されます。
香りはほぼ無臭で、色は淡い黄緑色です。
・マカダミアナッツオイル
粘度が低く軽い質感のため、フェイシャルマッサージやハンドマッサージで使用されます。
マカダミアナッツオイルはナッツの香りで、色は琥珀色です。
・アプリコットカーネルオイル
粘度が低く滑りがよいため、主にフェイシャルマッサージで使用されます。
杏仁の香りで、色は淡い黄色または橙色です。
・ピーチカーネルオイル
粘度がやや高く滑らかな質感のため、主にフェイシャルマッサージで使用されます。
ピーチカーネルオイルは甘い香りで、色は淡い黄色です。
もちろん他のキャリアオイルと混ぜて良いですし、精油をブレンドして香り高いトリートメントオイルを作ることも出来ます。