植物から芳香成分を取り出す方法は数種類ありますが、その中でも一般的なのが『水蒸気蒸留法』(Steam distillation method)という方法です。
ここではこの水蒸気蒸留法について分かりやすく解説していきます。
水蒸気蒸留法は水蒸気で蒸留する方法のこと
水蒸気時蒸留法とは、原料となる植物を水蒸気に当てることで精油を抽出する方法です。
まず、水を火にかけて水蒸気を発生させます。
その水蒸気の通り道に原料となる植物を置いておくことで、次第に熱と圧力により芳香成分が含まれている細胞が壊れ、植物の中にあった芳香成分が揮発していきます。
その後、蒸気とともに釜の上で濃縮された芳香成分と水蒸気は冷却管を通る間に冷やされて液体へと変化し、最終段階で水に溶けずに浮いてきた精油と分離することで精油が出来上がります。
一見簡単な方法になりますが、原料になる植物によって蒸留の時間、圧力、温度を変えて抽出するという手間暇がかかるのが水蒸気蒸留法です。
利益だけを考えて精製しようとすれば短時間に高温と高圧で蒸留すると精油を多く抽出できるのですが、揮発の遅い芳香成分が含まれなかったりするために成分や品質に影響を及ぼしてしまいます。
その結果、質の悪い精油が出来上がってしまうのです。
水蒸気蒸留法では、植物に合わせた丁寧な蒸留により良い製品が生み出されます。
また、抽出された精油は芳香成分が安定するまで保管されるのですが、この保管期間も植物によって違いがあります。
水蒸気蒸留法で抽出される精油
- イランイラン
- クラリセージ
- サイプレス
- サンダルウッド
- ジャーマン・カモミール
- ジュニパーベリー
- スイートマージョラム
- ゼラニウム
- ティーツリー
- ネロリ
- パチョリ
- ブラックペッパー
- フランキンセンス
- ベチバー
- ペパーミント
- ミルラ
- メリッサ
- ユーカリ・グロブルス
- ラベンダー
- レモングラス
- ローズ・オットー
- ローマン・マモミール
- ローズマリー・シネオール
精油と分けられた水にも芳香成分が含まれている
水蒸気蒸留法の際、精油以外の副産物ができることをご存知でしょうか。
これを『芳香蒸留水(ハイドロレート・フローラルウォーター・ハーブウォーター)』と呼んでいます。
この冷却された精油と分けられた芳香蒸留水は、芳香成分が若干溶け込んだ状態です。
さまざまな読み方があるのですが、どれも間違っておらず、メーカーやブランドによって違いがあることを覚えておくと良いでしょう。
豊富な芳香蒸留水
上記で紹介したラベンダーの他にも、ネロリやローズ、ローズマリー、カモミールなどのたくさんの芳香蒸留水があります。
メーカーで取り扱うものに多少の違いはありますが、まずはアロマを始めてみたい方、アロマクラフトで利用してみたい方にオススメの基材になります。
もうひとつの蒸気を使った方法
この他にも『パーコレーション法』という方法があります。
冒頭で解説しました火にかける方法ではなく、釜に直接蒸気を上部から注入するやり方になります。
メリットとして、本来の抽出法は種や木などの堅い部位からの精油を抽出するときに時間がかかります。
しかし、この方法だと1/3時間くらいの時間で蒸留することが可能というところです。
また、抽出された精油は水蒸気蒸留法とは香りが異なるため、芳香成分にも違いがあります。
シトラス系において水蒸気蒸留法の精油が増えています
本来、シトラス系の精油は圧搾法が主流でしたが、近年では水蒸気蒸留法でも抽出されています。
では、圧搾法で抽出できるシトラス系の精油をわざわざ水蒸気蒸留法でも抽出するようになったか。
実はこれらの精油にはフロクマリンやベルガプテンといった皮膚のトラブルを起こす芳香成分が微量にしか含まれないからです。
「皮膚が敏感だけど、どうしても肌使ってみたい」という方は、水蒸気蒸留法で抽出されたシトラス系の精油を使うことをオススメします。
しかし、新たに別の注意点もあります。
先ほどお話ししたようにフロクマリンやベルガプテンといった、圧搾法に入っている芳香成分が水蒸気蒸留法には微量にしか入っていないという違いがあるということは、香りにも違いがあります。
ですので、『香り』を優先して使うのか、『効果や効能』を優先して選ぶのか、自分でしっかり考えてから使用するようにしましょう。